「おもてなし」と「ホスピタリティ」の違い。

投稿日 : 2013年12月16日

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「しつらえ」という言葉は英語にないよね?

東京五輪招致のプレゼンテーション以降、すっかり話題の「おもてなし」。
よく「おもてなしの心」⇒「hospitality」という訳をつけられているように思いますが、ちょっと違うんじゃないかなと思います。逆は然りだと思いますが。
実際、あのプレゼンテーションに関しても、メディアでの英訳はselfless hospitalityとなっていました。つまり、「私心のないホスピタリティ」というところ。なぜselflessと限定したのでしょう。気になります。

違いがあるとすれば…、何なのでしょう。語源にヒントがあるのではないかと思い、調べてみました。

サービス
意味…奉仕する、仕える
語源…ラテン語の奴隷(servus)

ホスピタリティ
意味…心のこもったもてなし
語源…ラテン語の巡礼者などの保護(Hospics)

おもてなし
意味…日本人が客を迎える行動と心構え
語源…(モノを)もって成し遂げる、表(裏)無し

ホスピタリティは、見返りを求めないという意味で、対価に対するサービスとは違うとよく言われています。無償であるという点、そこは「おもてなし」と通じていそうです。じゃ、どこが違うのか…

ホスピタリティという言葉は、もともと道なき道を辿って危険を覚悟して巡礼してきた人たちを歓待したことからきているそうです。巡礼者は、予見できない来訪者です。巡礼者たちが命をかけて旅をして来たことを敬い、心を尽くして迎え入れる。

ホスピタリティのある主人は、客人の為を思い、客人を喜ばせるよう行動します。まずは客人の絶対的存在があり、その客人が何を求めているのかを察した主人は、その要求に合うように行動します。客人を喜ばせるのは、その主人の行動そのものなのではないでしょうか。

それに対して、おもてなしをする場面では、客人は招かれているか、来訪が予見されています。おもてなしの心のある主人は、客人に会う前に、まずしつらえを整えます。押し付けがましくならないように、さり気なく、気持の良い空間を作り出します。どんな憂いも客人に感じさせないように、万全を期して客人を迎えます。そして帰る時間まで、客人が気分よく過ごせるように、主人は心を砕きます。しつらえを整えない「おもてなし」はあり得ません。

前もってしつらえが整えられていれば、主人が表に出る必要は、必ずしもありません。あくまで謙虚に、客人を第一に考えて行動します。そういう意味で、selflessなのではないでしょうか。

これから数年の間、東京五輪のために準備する時間はたっぷりあります。新競技場のデザインコンペ通過案など、まずはハードウェアが話題になっていますが、是非ソフトウェアについても考え直したいところです。本来の「おもてなしの心」を思い出して、じっくりしつらえを整えられたらいいですね。