襲色目。

投稿日 : 2018年11月23日

日本人ならではの色彩感覚。

日本人の色彩感覚が優れていたことは、色を表現するコトバが沢山あることからもよく指摘されています。

萌葱色(あさぎいろ)、葡萄色(えびいろ)、伽羅色(きゃらいろ)、紅鳶色(べにとびいろ)、臙脂色(えんじいろ)、薄鈍色(うすにびいろ)…

ばあばと話していると、「ほら、あなたのお母さんが葡萄色の色無地(の着物)を持ってたじゃないの、あれよく似合ってたわよね」などと、普通に会話の中にも出てきます。

日本の色、名前の響きがすでに美しいです。勉強不足ゆえに、すぐに色が思い浮かばないことも多いのですが、どんな色だろうと想像するのも楽しいですね。「あ、あの色のこと!」と分かった時、その美しい名が付くまでの背景を思うと、その奥にまた世界が広がる思いがします。

相伝帛紗のページで触れた「襲色目(かさねいろめ)」は、ただでさえ美しい色彩感覚を重ね合わせるとても繊細な感覚です。

色の文化は平安時代に特に発展したと言われているようです。

当時、公家たち(特に女房たち)は暮らしの中で、季節ごとに色彩を楽しみました。色を「重ねる」ことで、色彩コーディネートを楽しんだのが「かさねいろめ」というものだそうです。色の重ね方には3種類あるのだとか。

合わせ色目
一番シンプルな「かさねいろめ」で、表の布と裏の布の色の組み合わせのことです。
現代でも着物は、秋〜冬〜春に袷(あわせ)を着ます。あの表地と裏地の合わせのことですね。
当時の公家が身につけたのは、もちろん絹生地で、それを草木など様々な染料によって染め、違う色同士を表と裏にそれぞれ使って合わせていたのでしょう。
薄い絹物では裏地の色が透け、複雑な色彩となったといいます。

重ね色目

襲(かさね)という漢字からも分かる通り、十二単のような重ね着に一枚ごとに違う色の布を重で合わせ、色彩のグラデーションを楽しんだもののことです。
袖にあらわれる美しい色の変化を、配色がしっかりしたものを「斑濃(むらご)」、同系色だと「匂い(におい)」などと呼んだというのだから、なんとも風情があります。

織り色目
反物(たんもの)を織るときに縦糸と横糸の色を変えることで、仕上がった布地は光の当たり具合や見る角度によって玉虫色に色彩を変えるように楽しんだもののことです。
一枚の布で複雑な色合いを生み出し、一言では表現できない奥行きのある色となります。

子どもたちの相伝帛紗は、この織り色目だったと言うわけです。
息子の「小習」用は、松重(まつがさね)で青(緑)色と紫色。
娘の「盆点」用は、蕾紅梅(つぼみこうばい)で紅梅色と蘇芳色。

いやぁ〜…しみじみと、奥が深いです。まだまだ勉強することが沢山ありそう。。。