ちょっと一歩離れてみれば…。
文章題が苦手な教え子に、どうやって論理的思考力をつけようか考えあぐねて、「出口汪の「最強! 」の論理的に考える技術」という本を手に取りました。
可愛いイラストの表紙と挿絵がある上、アイコン入りの対話形式なのでコドモでもとっつきやすいですし、大人ならすぐ読めます。が、説明している内容はオトナでも手応えを感じられると思います。
そこで紹介されていたコトバに、「離見の見(りけんのけん)」があります。論理的思考力を身につけるために必要な視点として紹介されていたんですけれど、このコトバ、ビジネスマンにとっても、主婦や子どもの日常生活においても、とても大事なことに思えます。
「能楽用語辞典」によると、
世阿弥が能楽論書「花鏡」で述べた言葉。演者が自らの身体を離れた客観的な目線をもち、あらゆる方向から自身の演技を見る意識のこと。反対に、自己中心的な狭い見方は「我見(がけん)」といい、これによって自己満足に陥ることを厳しく戒めている。現在でも全ての演技にあてはまることとして演者に強く意識されている。
とのこと。
世阿弥といえば、能阿弥とともに能を大成した上、能作者としても名が残る天才です。
「見所同見(けんじょどうけん)」「目前心後(もくぜんしんご)」というコトバも「離見の見」の言い換えと言えるコトバのようです。
「見所同見」は客席から見ているように自分を見ること。「目前心後」は目は前を見据えても、心は後ろに置いておくということ。
どのコトバも、自分の見ているものにとらわれることなく、客観的な視点を持つことの大切さを説いたものです。
忙しいと、どうしても目の前のことにとらわれてしまいがちです。
でも、心を後ろに置いて、客観的な視点で見てみれば、「重い」と思い込んでいた悩みも意外と軽いものだと気づくことができるかもしれません。
ふと、チャップリンの名言を思い出しました。
「人生はクローズアップで見ると悲劇、ロングショットで見ると喜劇」
このロングショットも、「離見の見」なのかもしれませんね。