白洲正子さんの言葉の中に「早くても荒くならぬように」「多くても粗雑に流れぬように」ということばがありました。これは大事なことを表しているように思えました。
「slow life」ということばと「ていねいな暮らし」ということばが同義に捉えられることが多いですが、「ゆっくり=ていねい」なの?と不思議に思います。随分前から世の中には「ていねいな暮らし」信仰というのがあるみたいで、なんだか違和感があります。
お稽古でも、お点前がどうしてもゆっくりになってしまう方はたくさんいます。そういうときは「もうちょっと速く…」と声掛けします。ゆっくりやったからといって、上手にできるということではない。速くちゃんとお点前ができれば、それをゆっくりにコントロールするのは可能ですが、その逆は無理…というのは、ちょっと考えればわかることです。放っておいたら、ゆっくりでしかお点前できないようになってしまいます。ある程度のテンポで上手にできるように、身に着けなくてはいけません。
私の尊敬するばあば(主人の母)は、「早く」て「ていねい」な人です。江戸っ子でせっかちなところもあり、「早い」のは、ばあばの美徳の一つ。歩くのは普通の人の早歩きのスピードだし、しゃべるのも早口。家事でもなんでも、いつだってサッサと終わらせて、どんどん次のことに取り掛かってしまいます。
ばあばはよく言います。「私、人の三倍は生きていると思うのよ」。子どもこそ2人しかいませんが、老人介護は4人分体験し、今までお稽古を見てきたお弟子さんは、茶道・華道の2つ合わせたら何十名もいます。しかも、自分も弟子として数々の習い事をしてきましたし、世界旅行や国内旅行など、遊びだって手を抜きません。もう、三倍どころではないかも?
ばあばは、一つひとつに真剣そのものです。時間がないから忙しいからなどと理由をつけて、いい加減とか適当に、ということは嫌い。やるからにはちゃんとやる!が信条です。
まだまだ「のろま」な私です。見習いたいと思いながら、今日もグズグズ。。。
自分に声掛けしつつ…「もうちょっと速く…」。